外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
頬が火照るのを意識して、一度深呼吸して気を鎮める。
そうして、左手首の時計で時間を確認して、急いで仕事に戻った。


「あ、上条さん。休憩中、お客様が来たわよ」


小走りで受付カウンターに入った私に、ちょうど接客を終えた先輩が声をかけてきた。


「お客様?」

「それって、『昼休みにちょっと妻の顔を見にきただけの旦那様』じゃないんですか~?」


先輩に聞き返す私の後ろを通りながら、なつみがニヤニヤ笑って冷やかしてくる。
私は少し目力を込めてなつみを睨み、苦笑する先輩に視線を向けた。


「違うわよ。私だって、上条さんの旦那様の顔は知ってるし」


先輩がなつみに向けた返事を聞いて、私は無意識に首を傾げた。


「誰だろう……? どんな人ですか。うちのビルの勤務者?」


受付に私を名指しで訪ねてくるような人って、いったい?


「ううん。そうじゃないと思う。この辺歩いてる分には特に目立たない、普通のスーツ姿のサラリーマン。正面ドアからまっすぐカウンターに来て、『周防七瀬さんはいらっしゃいますか』って聞いてきたから」

「普通のサラリーマン……」
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