外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
茶筅がゆっくり『の』の字を書く形に動き、ふわっと泡を持ち上げるようにして茶器から離れる様子を、私は目を凝らしてジッと見つめた。


「二杯目、どうぞ」

「ありがとうございます」


畳の上をスッと滑らせて差し出された二杯目を、私は両手で押しいただく。
今度は先に心構えをして、そおっと口に運んだ。
口に含んだ感じはさっきと変わらず、舌触りはふわっとまろやかだけど……。


「……あれ?」


一杯目、初めの一口よりも、苦味が感じられず、飲みやすい。
きょとんとする私を見て、藤悟さんが口元を手で隠してくっくっと笑った。


「使った抹茶の種類も違うけど、その分量や点て方によっても、味はだいぶ変わってくるんだ。一杯目より、マイルドな口当たりになってるだろう?」

「は、はい」


それなら、私の味覚がこの短時間でお茶の味を知り、慣れたわけではないということ。
つまり……。


仄かな疑心が胸を過ぎり、私は茶器を持ったままそっと目を横に向けた。
私の視線を受けた藤悟さんが、ニヤリと口角を上げる。


「ごめんね。ちょっと意地悪した」


そう言って、綺麗な正座姿勢のまま、胸の前で鷹揚に腕組みをした。


「先週の茶会では、終始奏介に見惚れていた七瀬さんが、俺にはなんの関心も持たず、手ばかり見てるのがちょっと癪でね」
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