扉の向こうはいつも雨
 と、次の瞬間、抱き上げられた。

「逃げるよ。」

「はい?」

 突拍子もない言葉に上擦った声が漏れた。

「フッ。やっぱり賑やかな子だね。」

 やっぱりって………。
 賑やかな子って…………。

 恐怖で震える体に届いた声は穏やかで低い優しい声だった。



 
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