無題 〜奇跡の7つ子〜

28:♣アリエル♣

「アリエル……エリック…」

私は、マッドを睨みつけた。

「おぉ、怖い怖い」

うざい。

ともかく、今は、相手に集中ぅぅ!

私は、屈んだ。

ヒュン!

危なっ!!


「あれれ?よけられた?…まじかぁ…まぁいいかぁ。あ、言っとくけど、僕らには、その魔法使えないよ?僕ら一応天界と魔界のものだから。」

チッ。それは、困る。

じゃあ、避けるしかないの?


「ハイハイ。行っくよォ!!!」

ホイホイホイホイ、炎を、エリックは、出してきた。

私は、どれも間一髪で、避ける。

私に当たらないから、エリックは、苛立っている。


バサァバサッ

後ろから、羽目の羽ばたくような音が聞こえた。

私は、しゃがむ。

ミツバチの色のようなの明らかにやばそうな弓矢を、アリエルが入ってきた。

「君の運動神経は、どうなってるの?聴覚視力嗅覚頭脳。あんた全てがいいよね。」


「あぶなぁ。怖いよ。アリエル」

「……うざい。」


え?

「ウザイ、ウザイ、ウザイ、ウザイ、ウザイ!!!!!」

アリエルの翼が、四枚黒くなる。

(まずい。早く止めなきゃ。)

「なんなの?あんた私を馬鹿にしてんの?」

アリエルは、黒に黄色がかった、槍を出した。

その槍を振り回してくる。

私は、避けながら思う。

(馬鹿になんかしてない。一度も馬鹿になんかしたことない。)

「めんどくさいことを押し付けやがって!!ウサギの監視とか、エリックに任せればいいだろ!!」

(痛っっ)

アリエルの槍が、足をかすめる。


「なんで私が!!私は、天使!!自分の選んだ人のとこに行く!!」

「なんで私が、あんたから離れなきゃいけないの!!……………」

私は、何とか、アリエルの武器を壊した。


「………あ……そっか…嫌いだからか。…私のことが嫌いだから、いじめるんだ。そうかそうか。そういうことか。なるほどなるほど。」

静かに笑う。そして、頷く。

それは、不気味だった。

エリックでさえも、怖さで、後退りをしている。

「じゃあ、始末しなきゃ。私に仇なす者は、死んでもらわなきゃ。」

アリエルの両脇から、黄色黒い、輪っかが出る。

(なんか、嫌な予感がする。)

「……死ね!!アリス!!!!」

言った途端に、輪っかの中から、黒銀の鉄の羽が出てくる。

「(数が多いな。どうしよう。何かないかな?)」

私は、怯えを感じた。

死ぬかもしれないという恐怖を。

(あ………そうだ。)

(感情のまま、心のままに、すべてを動かせばいい。)

私は、考えることを放棄した。

口が動くように動かし、体を動かすように動かす。


「フワッフワッフワぁぁ,飛んでいるぅ,羽がなくとも飛んでいる,「私は,だぁれ?」私は,なんでも,思えばなんでもなれるもの」

…おもえばなんでもなれるもの…

私は、想像してみる。

花畑で、ヒラヒラと、羽を動かし、誰にも捕まらないで、自由に飛ぶ姿を。

それをイメージして、体を動かす。


すると私の体は、羽が生えたように、ヒラヒラ舞った。

「なんだよ…こいつ…」


両者の武器を壊し、素手の戦いに持ち込む。

先に尻餅を着いたのは、アリエルだった。


「茨の木々,バラの花,花の縄,縄の花,茨の木,口々に,止めるよ止める,君のため,私の手足は,君を止めるためにある」

どこからか、茨が生える。

そして、エリック、アリエルを拘束する。

バラの花が咲く。真っ赤なバラの大輪が咲いた。

私は、茨の拘束魔法をついた。






なんだよこいつなんだよこいつなんだよこいつ!!

さっき戦った時は弱かったのに、今は、逆じゃないか。

明らかに、僕を殺す気だ。目が殺る気に満ちてるよ!!

僕がここまで、やってきた事はなんだよ!

意味なんか、なかったことになる。

これじゃあ、誰も認めてくれない。

誰も見てくれないじゃないか。





「……見てほしい……」


アリエルがポツリという。


「認めてほしい……抱きしめて欲しい……愛されたい……愛されたかった……」


私は、それを見て、ハッとした。

私は、茨の拘束魔法を、アリエルのだけ解いた。


「バラの花,縄の花は,ほつれてく,手足を解き,君を見つめる」


「………」


アリエルは、放心状態で泣いている。


私は、そっと、涙を拭う。


アリエルは、顔をそっと見上げる。

その顔はまるで、産まれたばかり、世界を始めてみた、ひよこのような、顔だった。

不思議という表情と、怯え、恐怖、嫉妬、などなど、たくさんの感情が混じった表情をしていた。


「ねぇ、アリエル。私は、あの時、君にウサギを任せたのは、君に面倒なことを任せたのではなく、ウサギが大切だから、信用、信頼できる人に任せたかったんだよ?それが、君。アリエルなんだよ。」

アリエルは、沈黙をする。

私は、話を続ける。

「エリックでも、フェアリーでもなく、私の大切な人を守る人は、君、アリエル。私は、君が嫌いじゃないんだよ。いじめてるわけじゃないんだよ。」

「見てるよ、私。ちゃんと、アリエルの事見てる。認めてるし、友達として、家族として、アリエルのことは、好きだよ?」

「アリエルが、気づいてないだけで、みんな見てるし、分かってるから、安心して、今は、お眠りなよ。」

アリエルの目から、真珠のような大きな涙が、流れた。

その泣きじゃくりさは、子供のようだった。

そしてしばらくして、アリエルは、眠った。


「はぁ、役たたずだなぁ。アリエルは。」

そう呟いたのは、フェアリー…女神だった。
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