お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
彰人はTシャツの上にボタンダウンシャツを羽織り、黒いズボンを履いている。

ラフな姿では、高級スーツを着こなす社内での彼と結びつくことはないだろうと、私は先ほどの自分の推測に自信を持った。

大丈夫。成田さんは専務が目の前にいるとは思わないはず……。


ところが、不機嫌そうな顔の彰人が、視線を私から成田さんに移すと、「俺が誰だかわかるか?」と問いかけるから、私は驚いた。


なんでわざわざ、そんな確認をするの!?


「彰人」と呼びかけたのは、『余計なことを言えば気づかれるかもしれない』という懸念を察してほしかったためだ。

けれども視線は合わず、彼は階段の二段目に座っている成田さんを睨むように見下ろしているだけである。


成田さんにはもう酔っ払いのヘラヘラした笑顔はなく、不安げな様子で「織部さんの彼氏ですか?」と質問に対して疑問形で答える。

その後の「彼氏はいないと聞いたので、誘ってしまったんです……」と言い訳する声には、責められることへの恐れが滲んでいた。

< 132 / 255 >

この作品をシェア

pagetop