お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
もしかして、顔も名前も知らない専務と、廊下ですれ違ったことがあるのかもしれない。

その時に私が無視してしまったから、お怒りなのだろうか?

でも、それくらいで呼び出すものかな……。

部長を通じての注意くらいが妥当かと思うけど、無視が度重なるものであったとしたなら、『今後は私の顔を覚えておけ』と文句を言いたくなるものかもしれない。


そう推測して、謝れば許してもらえるだろうかと顔を曇らせたら、エレベーターは十七階に到着し、静かに扉を開けた。


ローヒールのパンプスが踏んだのは、廊下に敷かれた紺色の絨毯だ。

個室のドアは味わいのある木目調で、壁には高そうな風景画が飾られている。

他の階の、白とグレーで纏められたシンプルで機能的な空間とは異なり、大企業の重役たちが過ごすに相応しい上質な設えである。


この階に足を踏み入れたのは入社時のオリエンテーション以来で、エレベーターを降りて右側に進めば秘書課があるということは、記憶に残っていた。

専務室の場所がわからないため、ウロウロするより聞いた方が早いと思い、まずは秘書課に向かう。
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