お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
エレベーターから十メートルほど先に見つけた秘書課のドアをノックしたら、「はい」という若い女性の声がして、私よりふたつか三つ年上だと思われる秘書が応対に出てきてくれた。
「営業部の織部さんですよね。どうしました?」
私の名前を知ってくれているようだが、言葉を交わすのは初めてである。
彼女は知的で整った顔立ちをして、ベージュのタイトスカートのオフィススーツを上品に着こなしている。
その顔を何度か社内で見かけたことはあるけれど、なにぶん大きな会社なので、名前を知る機会はなかった。
「あの、専務室はどこでしょう?」と尋ねれば、不思議そうな目で見られる。
「高旗(たかはた)専務に、どのようなご用事が?」と問う声には緊張が感じられた。
その理由は、「私は高旗専務付きの秘書の、西尾です。専務から、織部さんの訪室を知らされておりませんが……」ということのようだ。
「そうですか。私もよくわからないのですが、専務から岩寺部長に連絡が入り、私をお呼びになられていると聞きまして」
西尾さんに事情説明しつつ、教えられた専務の名前について考える。
高旗という名字は社長と同じだ。
ということはきっと、親族なのだろう。
弟だろうか?と予想しつつ、社長と同じ中肉中背で、前髪の生え際が後退している、眼鏡をかけた五十代の男性をイメージしていた。
「営業部の織部さんですよね。どうしました?」
私の名前を知ってくれているようだが、言葉を交わすのは初めてである。
彼女は知的で整った顔立ちをして、ベージュのタイトスカートのオフィススーツを上品に着こなしている。
その顔を何度か社内で見かけたことはあるけれど、なにぶん大きな会社なので、名前を知る機会はなかった。
「あの、専務室はどこでしょう?」と尋ねれば、不思議そうな目で見られる。
「高旗(たかはた)専務に、どのようなご用事が?」と問う声には緊張が感じられた。
その理由は、「私は高旗専務付きの秘書の、西尾です。専務から、織部さんの訪室を知らされておりませんが……」ということのようだ。
「そうですか。私もよくわからないのですが、専務から岩寺部長に連絡が入り、私をお呼びになられていると聞きまして」
西尾さんに事情説明しつつ、教えられた専務の名前について考える。
高旗という名字は社長と同じだ。
ということはきっと、親族なのだろう。
弟だろうか?と予想しつつ、社長と同じ中肉中背で、前髪の生え際が後退している、眼鏡をかけた五十代の男性をイメージしていた。