お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
ただ、その声にはハリと艶があり、若い男性のように聞こえて、私は戸惑う。

社長の弟かと予想していたけど、どうやら違うみたい。

それなら、息子だろうか……?


若くして大企業の専務の職を得るとは、私がこれまで見合いの席で顔を合わせた男性たちと同じ、“お坊っちゃま”という種類の人間だと思われる。

そのキーワードで、恐れや緊張は急速に薄らぎ、代わりに嫌悪感が膨らんだ。


私が出会った九人のお坊っちゃまは皆、自慢話が大好きだった。

ホテルオーナーの御曹司だという人は、政界の大物や芸能人との交流があることを得意顔で話していたが、私は少しも感心できなかった。

すごいのは芸能人や大物で、あなたではないと思うばかり。


ある有名な建設会社社長の息子は、クルージングが趣味であると、私に話した。

自身が所有する高級クルーザーで、友人と二カ月の船旅をしてきたばかりだと、鼻高々に教えてくれたが、それにも私はため息をついただけでこれっぽっちも惹かれない。

『遊んでばかりいないで、働きなよ』と心で思うだけだった。

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