お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
もし、『俺の分は?』などと聞かれたら、自分で作れとはっきり言ってやろうと思いつつ、リビングのドアを開ける。

すると中からふんわりと、だしと醤油の食欲を誘ういい香りが漂ってきた。


「え……?」と呟いた私の目は、奥のオープンキッチンに立つ専務の姿を捕らえる。

彼はスーツのズボンとワイシャツの上に、紺色の無地のエプロンを着て料理をしていた。

四角いフライパンと菜箸を持ち、器用な手つきで卵焼きを作っている様子。

チラリと私に視線を向け、「朝飯、もうできるから、そこに座れ」と穏やかな口調で言った。


「はい……」


これは予想外だ。

まさか彼が私の朝食を作ってくれるとは少しも考えていなかったので、驚き戸惑っている。

『そこ』と言われたのはキッチン手前のカウンターテーブルで、三つ並んだ椅子の右端に腰を下ろすと、すぐに目の前に朝食を並べてくれた。


炊きたてのご飯と豆腐とワカメの味噌汁に、キュウリの浅漬けと鯵の開きの塩焼き。

作りたての卵焼きは、ふた切れが大根おろしを添えて出される。

木の年輪のような断面は芸術的に美しく、私の口からは感嘆の息が漏れた。

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