お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
こんなに完璧な朝食を目の前にしたのは、いつ以来か。

すぐに思い出せないが、ひとり暮らしのアパートではない、ということだけは確かだ。


専務は左端の椅子に座り、私たちの間にはひとつ空席があった。

彼の前にも同じメニューが並んでいて、無言で食べ始めている。

無表情なその横顔に「いただきます」と声をかければ、「早く食え。温かいうちに」というぶっきら棒な返事をされた。


高旗専務って気難しそうな人だけど、親切なところもあるみたい。

少なくとも、ひとり分のハムエッグを作る気だった私に比べれば、優しい人だと言える気もする。

たった一回の朝食で、そう判断するのは早いかもしれないけれど……。


そんなことを考えつつ、卵焼きをひと口食べたら、その美味しさに蕩けそうになる。

優しいだしと醤油の旨味が私の舌を喜ばせ、ふわふわの食感が口の中で気持ちいい。


凝ったメニューではないが、どの皿も完璧に調理されていて、あっという間に平らげた私は「美味しかった」と満足して呟いた。

それから彼に向き直り、「料理がお上手なんですね。プロ顔負けの凄腕です」と正直な感想を伝える。

すると、「褒めても毎日は作ってやらないぞ。出張でいない日もあるからな」とまだ食事中の彼が私を見ずに答えた。

その頬は薄っすらと赤みを帯びていて、私は目を瞬かせる。

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