お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
背を向けたままで言ったということは、おそらく彼に余裕はないと思われる。

劣勢を悟り、焦って反撃に及んだというところであろうが、その言葉は私を怒らせるには充分であった。


ひとり暮らしは大学からで、もう八年ほどになる。

大学は奨学金を借りて通い、その返済がまだ済んでいないため、一流企業のOLをしていても裕福ではないが、私は自力で堅実に生きているつもりだ。

しっかりしろと言いたいのは、落ちぶれても現実を見ようとしない親の方で、かじる脛もない。


専務より五歳年下の私だが、子供扱いするなと言いたくなった。

たまチョコフィギュアは玩具の範囲を超えて、大人も楽しめる美術品だし、料理だって人並みにはできるつもりだ。


憤慨した私は椅子を鳴らして立ち上がり、「私は大人です。料理だってできます!」と語気荒く主張した。

すると振り向いた彼が、獲物が罠にかかったとばかりに、口の端をつり上げる。

その頬の赤みは完全に引いていた。


「へぇ。それじゃあ作ってもらおうか。だし巻き卵の材料だけなら、まだある。やってみせろ」

「え……今ですか?」


私が急に勢いをなくしたのは、彼の絶品卵焼きを食べた後では、自分の料理に自信が持てないせいである。

どうしよう。普通のものしか作れないよ……。

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