無敵の剣
その夜は、寝付けなかった


私が知らせたことで、長屋の人々の遺体は
奉行所に運ばれた



なんだか、ひとりになりたくて



庭を歩いていると

人の気配に思わず隠れてしまう





「藤堂 何を怖じ気づくことがある
お前は、護衛なのだから
こっそり薬を入れ替えるくらい
簡単な事だろ? 伊東さんは、アノ女を
生かしておこうと言ったが
俺は、反対だ! 女を殺せ!」




この声は、平隊士
伊東組の内部も分裂して
藤堂さんは、その間にも挟まれているのか



藤堂さんがひとりになったのを見計らい




「その薬 私のですよね?
貰っていいですか?」


「これは…」


「ほら!ちょうど欲しいと話してたでしょ!
大丈夫です!解毒薬がありますから!
藤堂さんは、任務を遂行しないと
怪しまれるでしょ!! ね!」


私は、右手を差し出した



ポツンと紙が置かれた


少し触れた藤堂さんの指が
カタカタと震えていた


瞬間、藤堂さんに抱きしめられた


「ご… めん…」


可哀想と思った



自分の意思で何も決められない状況に
追い込まれている

藤堂さんが、可哀想で


私は、藤堂さんの背に手を回した




「藤堂さんは、悪くない」





震えている

藤堂さんの震えが伝わる度

泣きそうな気持ちになる






「ごめん こんな弱い護衛で…
でも、幸の事はちゃんと守るから!」


「はい! 頼りにしてます!」






私は、藤堂さんと別々に歩いて

土方さんの部屋の前に座った



















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