イジワル上司にまるごと愛されてます
「今は早く赤ちゃんに会いたくて楽しみで仕方ないよ。でも、今生まれてこられても早すぎでまずいんだけど」

 茉那はそう言って、ふふっと幸せそうに笑った。だが、すぐに真顔になる。

「雪谷くん、今日から来てるんだよね?」
「うん。それも私の上司としてね」

 来海はなんでもないふうを装い、小さく肩をすくめて見せた。

「しゃべった?」
「そりゃ、もちろん。同じ部署だもの」

 茉那が心配そうな顔になる。

「……大丈夫、だった?」
「大丈夫って、なにが?」

 来海が言ったとき、女性店員が水の入ったグラスを運んできた。

「ご注文はお決まりですか?」
「えっと……」

 来海はメニューを広げて、茉那に見えるように置いた。今日のランチプレートは“ロコモコ丼プレート”と“ミックスサンドイッチプレート”、“照り焼きチキンプレート”の三種類だ。

「私は……ミックスサンドイッチプレートとオレンジジュースを」

 茉那が言った。
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