蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
中條さんがため息交じりに囁きかけてくる。
「倉渕物産の受付で社長の娘を口説こうとした呆れるほど愚かなあの男性は、いったいどこのどなたですか?」
すっと手の平を差し出され、私は身体を強張らせる。
「ち、違います。私を口説こうとかそんなんじゃなくて、同じ学校で、先輩で、部活も同じで、懐かしくて……」
「名刺をこちらへ」
状況を説明しようと試みたけど、中條さんの冷たい声音と鋭い眼差しが深く突き刺さり、私の心はあっけなく折れた。
目に涙を浮かべながら、彼の手の平に水岡先輩から渡された名刺を乗せると、中條さんは冷めた顔で名刺に書かれている情報を確認し、すぐにそれを私に返してきた。
「……覚えました」
「覚える必要なんて」
「あります。あなたが男に言い寄られて困っているようなときはすぐに報告しなさいと社長から命令を受けておりますから」
お父さんがそんなことをと呆気にとられながらも、嫌な予感が身体の中で疼き出す。
「あの、中條さん。つかぬことをお聞きしますが、今までお父さんに何か報告したことは……」
「えぇ、ございます。何回も」