蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~

胸が高鳴れば高鳴るほど、心の中が幸せな気持ちでいっぱいになっていく。

昨日のことは夢なんかではない。

ちゃんと自分が彼の特別になれていることを実感し、私は満面の笑みを浮かべながら、軽快に門をくぐり抜けたのだった



+ + +




「社長、今日はどうしたんだろうね」

「……さぁ」


用事もないのに頻繁に受付の前を通り過ぎて行く父を見て、久津間さんが疑問を口にした。

それに対して首を傾げてみせたけれど、実際は、父の顔を見れば今朝の話の続きをしたいことが丸わかりである。

やって来た秘書に父が連れて行かれる光景を半笑いで眺めていると、横から肘で突かれた。


「そう言えばさ。花澄ちゃんの知り合いの彼、残念だったね。」

「私の知り合いの彼……って誰のことですか?」


久津間さんの突然の言葉の意味が分からず再び首を傾げると、彼女も戸惑ったように瞳を大きくさせた。


「この前、営業の刈谷さんに会いに来てたデザイン事務所で働いている彼……確か、学生時代の先輩みたいなこと言ってなかったっけ?」


そこまで言われれば、あまり思い出したくなかった人物の顔が頭に浮かんでくる。


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