蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
早速自動販売機と向き合った彼に「佳一郎さんと同じものを」と答えてから、私はホッと息をついた。
「話ができて良かったです。佳一郎さんがそういうことを考えていたなんて思いもしなかったから……てっきり」
「てっきり?」
「……倉渕家に一生を捧げるとか、私と兄のお手伝いさんとか、そう言われたのが嫌だったのかなって思ってました」
新しい缶コーヒーを両手に驚いた顔で佳一郎さんが振り返った。
「まさか、そんなことで悩んだりしませんよ。すでに俺は自分の人生を倉渕物産に捧げたいと思ってましたから」
コトリと小さな音を立て、テーブルに缶コーヒーが並べ置かれた。
彼が私の腰を引き寄せれば、互いの距離がぐっと近づき、視線の先にある唇が綺麗な弧を描いた。
「副社長はともかくあなたのことは、これから堂々と、かつ大きな顔でお世話をさせていただきます」
「お手柔らかにお願いします」
輝きをたたえる瞳に引き寄せられていく。
互いの鼻先が触れあいくすぐったさに笑みを浮かべれば、彼が甘く囁きかけてくる。
「心配いりません。社の男性らに見せつけたいだけなので、しっかり甘やかしてさしあげますよ。心の準備をしておいてくださいね」
頬に触れる手も、重なった唇も、熱のこもった吐息も、その一瞬一瞬が特別で愛おしい。
あなたと私の甘い時間は、まだまだ始まったばかりである。
END


