蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~

就業時間を終え、久津間さんと一緒に社を出たのだが、駅に着いたところで、バッグの中に財布がないことに気が付いたのだ。

置き忘れていたとしたら多分ここだろうと当たりをつけ、小走りで社に戻ってきたため、誰もいないロッカールームには私の荒い息遣いが虚しく響いている。

しっかりとお財布をバッグの中に入れ、深呼吸してから歩き出した。

ロッカールームを出て進んで行くと、ガラス壁の向こうにあるフロアの一角に、副社長である兄の姿を発見する。

デスクの位置関係からして、兄がいるのは営業部のデスクが並んでいるあたりだろう。

兄はデスクに片手をつき、パソコンのディスプレイへと冷静な眼差しを向けていて、そんな彼のそばに男性と女性の社員が二人ずつ立っている。

男性社員は兄と同じように真剣な顔でパソコンを見つめているけれど、女性たちは呆け顔で兄の横顔に釘付けになっている。

私の兄は完璧に格好良いいから無理もない。

それに兄には恋人だってちゃんといる。相手は我が社と肩を並べるような大企業の社長令嬢である。

全てを持っていてずるい。

妹の私に何か恵んで欲しい。

出来れば、恋愛運をわけて欲しい。


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