蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~



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先輩と訪れたお店は、一年ほど前に家族で食事をしたフレンチレストランだった。

レンガ造りの外観も素敵だけれど、店内も上品で落ち着いた大人の空間となっているため、雰囲気の良い店としてしっかりと記憶に残っている。


「そんなこと言って、家族とじゃなくて本当は彼氏と一緒に来たんじゃないの?」

「家族です。その勘違い、切なくなるので止めてください」


正確には、父と母と私、それから兄と兄の恋人の五人で食事をしたのだ。

食事をしながら交わされたのは結婚に向けての会話である。

もちろん私のではない、兄のである。

幸せいっぱいの兄カップルに、羨ましさと共にいつかは自分もと希望と期待を膨らませはしたけれど……私には彼氏どころか思いを寄せる男性すらいなかった。

現実に戻れば膨らんでいた気持ちは徐々に切なさへと変化し、兄たちとの食事会は楽しくもあり虚しくもある時間となってしまったのだ。

だからこそ、私に「本当は彼氏と一緒に来たんじゃないの?」という言葉はちょっぴり残酷だ。


「私、彼氏いませんから」


ふて腐れつつ、ローストされた子羊のお肉を口に運んでいると、食事もそこそこにワインを飲んでいた先輩が「うーん」と納得できないような唸り声を発した。


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