蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~


「受付嬢だって大変な仕事なのは分かってるよ。でもね、花澄ちゃんはできる子だから、君のお兄さんのように倉渕物産のもっと重要なポジションに就いていてもおかしくないのになって思ったんだ」


できる子。そんなふうに言ってもらうことはあまりないため、つい困惑してしまう。

自分に向けられる真剣な眼差しにだんだん落ち着かなくなり、私は少し冷めかけているコーヒーへと手を伸ばした。


「父親のそばから離れたいとは思わない? 倉渕社長の娘ではなく倉渕花澄として、自分の力を発揮してみたいと思わない? 俺のそばでならそれができる。給料の方だって頑張らせてもらう。ミズタデザインに来て、まずは俺の秘書から始めてみないか?」


心を見透かされたような気持ちにさせられ、ドキリとしてしまう。

心なしか鼓動が速くなっているのを感じながら、私は「秘書」と水岡先輩の言葉を繰り返していた。

無意識に中條さんのことを連想してしまう。

他社であったとしても秘書という仕事に就けたら、中條さんの目線に少しでも近づけるだろうか。

とは言え、今の仕事に対して大きな不満があるわけでもないため、興味すら持つことのなかった新しい環境へ踏み込んでいくことへの不安は限りなく大きい。


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