蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
頭の中で様々な感情と向き合っていると、水岡先輩が「花澄ちゃん」と低い声で私を呼んだ。
「返事はまた次会った時でいいよ。俺は、花澄ちゃんの笑顔に癒されながら一緒に仕事ができることを本気で願ってるからね」
水岡先輩は微笑みながらワイングラスをかかげ、中に残っている赤紫色の液体を一気に飲み干した。
+ + +
「あぁー! 今夜は気分が良い!」
店を出ると、水岡先輩は夜空を仰ぎながら機嫌よく声をあげる。
私はその後ろ姿を見つめながらふうっと息を吐き出した。
歩き出せば、足元がふらついてしまう。
「あっ」と声を上げれば、すぐに水岡先輩が振り返り、私の身体を支えてくれた。
「花澄ちゃん、大丈夫?」
「すみません。大丈夫です」
すぐに私は姿勢を正し、さりげなく先輩と距離をとってから無理やり笑ってみせた。
「今日はたくさんお話を聞かせてもらって、とても楽しかったです。もしサッカー部のみんなで集まることがあったら、私にも声をかけてくださいね」
「もちろん。またすぐに連絡するよ」
言い終え互いに微笑み合ったあと、私は車道へと目を向ける。
「私、タクシーで帰ろうかな。先輩はどうしますか?」