蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
私の頬を掠めるように伸ばされた彼のもう片方の手が、水岡先輩の額を遠慮のない力で押し返していく。
「あなたの本気とやらは、彼女を泣かせてまで貫くほど価値のあるものには思えませんね……ほら、何ぼんやりしているのですか。もっと花澄さんから離れてください」
目の前で手を払われ、水岡先輩は困惑顔で一歩後退する。
しかしその一歩だけでは中條さんを納得しなかったらしく、さきほどよりも大きく手を払ってみせた。
「全然足りません。あと三歩……いや、五歩下がってください……えぇそれくらいで良いでしょう。今後花澄さんとはこの距離を保ってください」
離れるように指示しながら、中條さんは私の口を覆っていた手で、しっかりと私を引き寄せる。
後ろから片手で抱き締められているような格好になっていること気が付けば、さきほどよりもさらに恥ずかしくなっていく。
水岡先輩は、中條さんに言われるままに五歩下がり、その後に追加された要求も戸惑いながらもコクコクと頷き返したところで、ハッと我にかえった。
首を大きく横に振りながら、一気に元いた場所まで戻ってくる。
「ふざけるな! お前こそ、花澄ちゃんから離れろ!」