オオカミ弁護士の餌食になりました

「真凛、なにを考えてる?」

 あのとき理想のお兄ちゃんだった彼は、今現在、色気たっぷりに微笑んで、私の正面の席に座っている。

「……仕事中は苗字で呼んでくださいと言ったはずです」

「ここは会社じゃないし、今は昼休憩中だ」

 皮肉っぽい笑みを浮かべて、彼は薄く切った和牛にクレソンを包んで口に運ぶ。

 二ツ星ホテルで修行していたというシェフがとことんこだわった食材で作る美食イタリアンは、控えめの照明と、深い色味の木材が大人の空間を演出する、とてもムーディーな店だった。

「この店、落ち着いて話せるからビジネスシーンで使うことも多いんだよ」


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