オオカミ弁護士の餌食になりました

 そういう彼の努力だけは、認めないわけにはいかない。

 今にも泣きそうになっている兄がグラスを掲げて「乾杯!」と声を張る。乾杯、と会場で声が上がり、祝宴が始まった。

 壇上ではいまだに兄が、同期の人たちから赤い目をからかわれている。その姿をぼんやり見ていたら、ぽんと肩を叩かれた。

 振り向くと、兄ほどではないけれどやっぱり長身で、細身のダークスーツを完璧に着こなした男性が立っている。

「盛り上がってるな」

 壇上をちらりと見て、香坂さんは苦笑した。

「今来たんですか?」

「ちょっと仕事が押してね」

 そう言うと、私の姿を見下ろして、微笑む。

「きれいだね。今日は特に」

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