オオカミ弁護士の餌食になりました

「いい年して、その感情の乱高下どうにかならないの? せっかく独立したのに、そんなんじゃお嫁さん来てくれないよ」

 ハンカチを差し出しながら言うと、兄は一瞬だけ真顔になった。それから目を細める。

「俺より先に、お前だ」

「え……?」

「真凛がどうにかなるまで、俺は結婚しない」

「兄、さん?」

 真剣そうな表情をふっと崩すと、私の頭をぽんとなでた。それから傍らに立つ香坂さんに目を移す。

「頼む、千暁」

「ああ、もちろん」

 私にはわからないやりとりが交わされたと思ったら、「じゃあ、ゆっくりしていってくれ」と言って、兄は別のグループのところへ挨拶に向かった。

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