オオカミ弁護士の餌食になりました

 となりに座った私に、彼はいたずらっぽく言う。そんな香坂さんをじっと見つめて、私は答えた。

「ひとつだけ、教えてください」

「ん?」

「さっきの、兄とのやりとりのことです」

『真凛がどうにかなるまで、俺は結婚しない』

 見たこともないような真面目な顔で、そう口にした兄を思い出す。

『頼む、千暁』 

 兄と香坂さんのあいだで、なにかの話がついている。そう思えてならなかった。

 私の視線をまっすぐに受け止めて、香坂さんは眉を下げた。

「真凛は海斗とちがって鋭いな」

 そう言って、思い出したように笑う。

「まあ、あんなふうに言われたら、そりゃ勘づくか」

 彼は心もち真剣な表情に戻り、言葉を続けた。

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