オオカミ弁護士の餌食になりました

「海斗は海斗なりに、責任を感じているんだよ。君の恐怖症のことに」

 それはにわかには信じられない言葉だ。

 私に『男=嫌悪感』と刷り込んでおいて、今更自分のせいだなんて、あの兄が思うのだろうか。

「真凛が結婚できなかったらどうしよう」

 兄の口調を真似るように言って、香坂さんは試すように私を見る。

「去年、君と再会した後、海斗とふたりで飲む機会があってね。そのとき、あいつが酔って泣きながら言ったセリフだよ」

 苦笑しながら「これ、内緒な」と言って、香坂さんは背もたれに腕をあずける。

「真凛が男に心を開けないのは俺のせいだ。あいつが幸せになるのを見届けるまで、俺は絶対に結婚しない」

 兄が言ったというセリフを、香坂さんが繰り返す。

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