SKETCH BOOK
「それ、ちょうだいね」
「ああ」
橙輝はすぐに
あたしのケータイに写真を送ってくれた。
「ありがとう」
「おう」
「ねえ、今度さ、あたしを描いてよ」
「は?」
「いいでしょう?ね?」
途端に橙輝の顔が曇る。
その表情を見た瞬間、胸が痛んだ。
「人は描かねぇんだ。俺は」
麻美さんは描いているのに……。
すぐにそう思った。
そうだよね。
麻美さんは特別だもんね。
麻美さん以外の人は描きたくないか。
言ってしまって後悔している。
まさかこんなに精神的にやられるとは。
「そっか!じゃあしょうがないね!」
慌てて明るく振る舞うと、
橙輝は柔らかく笑った。
ごめんな。
そう言っているようだった。
しばらくあたしは一人で
ひまわり畑を回って歩いた。
人は全然いなくて、貸し切り状態。
それが嬉しくて、随分はしゃいだ。
自分の背よりも大きなひまわりを見ていると
心が和らいだ。
最近勉強詰めの毎日だったから
いい気分転換になる。
解放感に溢れていた。
写真を撮ったり走り回ったり。
その後を橙輝がゆっくりとついて回っていた。
橙輝は時折写真を撮るだけで、
あとはずっと無言のままでついてきていた。