SKETCH BOOK
✻
「見た?」
「見た!意外だよね」
「すごかった!」
あれから一週間経って、
学校に行くと教室中がざわついていた。
橙輝とあたしと浩平は三人で顔を見合わせた。
何をそんなに騒いでいるんだろう。
「綾子、どうしたの?」
近くにいた綾子に声をかけると、
綾子は橙輝を見て驚いた顔を見せた。
橙輝の顔に何かついてる?
そう思って橙輝の顔を見るけれど、
何も違和感はない。
首を傾げると、
綾子は言いにくそうに声を上げた。
「あのさ、鳴海くんって、
そういう才能あったんだね!」
「は?」
「絵だよ!絵!上手いんだねぇ。
びっくりしちゃった。
普段何してるか分からない
謎なところがあったけれど、
いつも絵を描いてたんだね」
「何で知って……」
「みんな知ってるよ!だって
職員室前の廊下に張り出されてたもん」
その言葉を聞いて、
橙輝と顔を見合わせた。
なんでそんなことになってるの?
橙輝は自分から絵を見せることなんてないのに。
橙輝は教室を飛び出した。
その背中を追いかけると、
職員室まで辿り着いた。
職員室前には人がちらほら集まっていて、
橙輝が来るとみんながひそひそ何かを話し出した。
見て見ると、確かに橙輝の絵がそこに飾られていた。
絵の脇には「コンクール最優秀賞受賞」
と書かれている。
一体どうしてこんな……。
「先生だ……」
山根先生だ。
あの時橙輝のスケッチブックを取り上げたから、
その時に絵を見たんだ。
でも、なんで勝手にそんなことを。