SKETCH BOOK
✻
空き教室を後にして廊下を歩くと、
今更になって涙が溢れてきた。
あたしの行動は間違っていなかったのかな。
これで良かったのかな。
橙輝の苦しそうな顔と、
吹っ切れたような顔を見ていたら
涙が溢れてくる。
今までどんなに辛くて、
今回でどれだけ傷ついたのか分からない。
それに比べるとあたしの日常の嫌な事なんかは
どうってことなく思えてくる。
それだけ衝撃的だったんだ。
「梓」
声をかけられて振り返ると、浩平がいた。
浩平は少し寂しそうな顔をしてあたしを見ていた。
「浩平。どうしたの?」
「どうしたって……梓はどこに行ってたの?」
「あたしはちょっと」
橙輝と一緒にいたって言ったら
怒るかな?
そう思って言葉を濁した。
「そんなに、鳴海がいい?」
「えっ?」
「鳴海と一緒にいたんでしょ?」
「そ、それは……」
まずい。怒ってる。
普段あんまり怒らない浩平が
怒っているのが分かる。
おじさんに絡まれた日みたいな、
怖い顔をしている。
やっぱり橙輝と一緒にいたことが
まずかったのかな。
でも、しょうがないよね。
緊急事態だったんだから、
浩平だって許してくれるよね。