SKETCH BOOK





空き教室を後にして廊下を歩くと、
今更になって涙が溢れてきた。


あたしの行動は間違っていなかったのかな。


これで良かったのかな。


橙輝の苦しそうな顔と、
吹っ切れたような顔を見ていたら
涙が溢れてくる。


今までどんなに辛くて、
今回でどれだけ傷ついたのか分からない。


それに比べるとあたしの日常の嫌な事なんかは
どうってことなく思えてくる。


それだけ衝撃的だったんだ。


「梓」


声をかけられて振り返ると、浩平がいた。


浩平は少し寂しそうな顔をしてあたしを見ていた。


「浩平。どうしたの?」


「どうしたって……梓はどこに行ってたの?」


「あたしはちょっと」


橙輝と一緒にいたって言ったら
怒るかな?


そう思って言葉を濁した。


「そんなに、鳴海がいい?」


「えっ?」


「鳴海と一緒にいたんでしょ?」


「そ、それは……」


まずい。怒ってる。


普段あんまり怒らない浩平が
怒っているのが分かる。


おじさんに絡まれた日みたいな、
怖い顔をしている。


やっぱり橙輝と一緒にいたことが
まずかったのかな。


でも、しょうがないよね。


緊急事態だったんだから、
浩平だって許してくれるよね。



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