SKETCH BOOK





あれから二週間。


浩平はいつも通りに接してくれた。


避けたりとかは一切なく、
いつも通りおはよう、とか、


またね、とか、
挨拶をしてくれる。


そのおかげで気まずくなったりはしなかった。


橙輝に話すと、そっか、と一言言っただけだった。


それでも、前みたいに
三人一緒とまではいかなくて、


やっぱり前とは違うんだっていうことを
思い知らされる。


浩平の存在が大きかったんだということに気付いた今、
あたしは少しの後悔を抱えている。




浩平とあたしが別れたことは
すぐにクラス中に広まった。


みんな不思議がっていて、
最初の一週間は質問攻めにされていた。


浩平は特にそうなったいきさつを言うこともなく、
他に好きな人が出来たんだと説明した。


あたしのためについてくれた嘘を思うと
胸が苦しくなる。


あたしもその嘘に乗っかり
話を合わせると辛くなる。


明るく答える浩平を上手く見られない。


どこまでもあたしは
浩平に甘えているんだなぁとつくづく思った。


橙輝はあれから変わらずにいつも通り。


新しいスケッチブックに絵を描いているけれど、
相変わらず見せてはくれない。


何を描いているのかとても気になる。


また麻美さんの絵を描いているんだろうけど。


あの日以来、橙輝の顔はどことなく
吹っ切れたような表情をしている。


それはいいことなんだろうけど、
あたしの中ではしっくりこない。


きっとまた、麻美さんへの嫉妬心が
舞い戻って来たんだ。


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