SKETCH BOOK
✻
あれから二週間。
浩平はいつも通りに接してくれた。
避けたりとかは一切なく、
いつも通りおはよう、とか、
またね、とか、
挨拶をしてくれる。
そのおかげで気まずくなったりはしなかった。
橙輝に話すと、そっか、と一言言っただけだった。
それでも、前みたいに
三人一緒とまではいかなくて、
やっぱり前とは違うんだっていうことを
思い知らされる。
浩平の存在が大きかったんだということに気付いた今、
あたしは少しの後悔を抱えている。
浩平とあたしが別れたことは
すぐにクラス中に広まった。
みんな不思議がっていて、
最初の一週間は質問攻めにされていた。
浩平は特にそうなったいきさつを言うこともなく、
他に好きな人が出来たんだと説明した。
あたしのためについてくれた嘘を思うと
胸が苦しくなる。
あたしもその嘘に乗っかり
話を合わせると辛くなる。
明るく答える浩平を上手く見られない。
どこまでもあたしは
浩平に甘えているんだなぁとつくづく思った。
橙輝はあれから変わらずにいつも通り。
新しいスケッチブックに絵を描いているけれど、
相変わらず見せてはくれない。
何を描いているのかとても気になる。
また麻美さんの絵を描いているんだろうけど。
あの日以来、橙輝の顔はどことなく
吹っ切れたような表情をしている。
それはいいことなんだろうけど、
あたしの中ではしっくりこない。
きっとまた、麻美さんへの嫉妬心が
舞い戻って来たんだ。