SKETCH BOOK




土曜日。


晴れやかないい日だった。


お母さんと二人で荷物をまとめる。


お父さんは書斎から出てくることはない。


お母さんが最後に
玄関の鍵をポストへと入れた。


「さ、行きましょう」


「行きましょうって、どこに?」


「新しい家よ」


新しい家、かぁ。


本当に離婚するんだ。


そして本当に再婚するんだ。


部屋に戻ると、
段ボール箱にそれぞれ何が入っているか書いていく。


それにしても、この家には
あたしの大切なものがありすぎたんだなぁ。


段ボール箱の数を見て、しみじみ思った。


「梓!行くわよ」


「はぁい!今行くー!」


慌てて返事をして自室を出た。


一階に降りると、廊下の突きあたりに
お父さんの書斎がある。


ひんやりと冷たい廊下を歩いて、
書斎のドアをノックした。


「梓か?入りなさい」


低くそう言われて、中に入った。


沢山の本に包まれたこの部屋は。
よく小さい頃に足を運んでいたけれど、


大きくなってからは
あまり行くことはなかった。


「どうした?」


「お父さん、あたし、行くよ」


「ああ、そうか」


「お父さんは……
 あたしのこと、好き?」




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