異邦人
それだったら空いているので俺は快諾をした。
来週かぁ、意外と長いなと思った。もっと早めに彼女とサシで会いたかったけどそれ以上嘆いても仕方がないので会える日を楽しみにしようと心を切り替えた。
「じゃ、来週の土曜日19時に東京駅北口で」それ以降彼女からの連絡が来ることはなかった。特に俺からも用はないので「分かりました」とだけ返信するとそこで彼女とのやり取りが終了した。

大学時代の友人数人と新宿のスポーツバーで落ち合った。ここでは、モニターで映し出されるサッカーを観戦しながらくだらない話をしてダラダラ過ごすのが学生時代からの習わしだった。
それぞれ職種が違うこともあり大学時代の友人と話すときは大抵仕事よりも女の話が多かった。俺たちの中ではまだ一人も既婚者がいなかったため出会いの話、恋愛の話が一番話題に花を咲かせた。露に濡れた鮮やかな花を。
「彼女の束縛がすごくてさー」と高橋が言った。この中で一番のムードーメーカの雅人は「羨ましい悩みじゃねーか。俺なんか縛ってくれる女もいねー」と彼女がいない自分を嘆いた。するとこの中で一番格好良くて女にモテる長身の貴公子、長谷裕二は「俺は街コンで知り合った女の子と最近やったよ」とさも難しくもなんともない軽さで淡々と報告した。「なにー!!」と僻みを顕にした雅人が「羨ましい奴め!この色男が!」と長谷裕二に食ってかかる姿を見てみんなが笑った。
「俺も最近、異業種交流会パーティーで知り合った子とデートしたよ」と佐々木が言うと「佐々木ブルータス、お前もか」と雅人が訳の分からないことを言って場を盛り上げた。
「ところでマッスーはどうなんだよ」と一番この中でも雰囲気が落ち着いてる健吾が聞いてきた。「え?俺?」と不意打ちをくらって俺が戸惑っていると「俺もマッスーの恋ばな聞きたい」と高橋が乗ってきた。
「いや、恋ばななんてねーよ」と俺は言うと「片思いでもなんでも良いから」と佐々木ブルータスが言ってきた。
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