男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
ベッドと衣裳ダンス、小さな机があるだけの質素な部屋だったが、居心地はよさそうだ。

ミシェルは中へ進み、トランクを端に置いた。ベッドの上にパリッとした真新しい侍従服がきちんと畳まれて置いてある。


「そちらに着替えなさい。私の部屋は隣です。待っていますからノックをしてください」
 

アベルは机の置かれた右側の壁を示してから出て行った。

彼が出て行ってミシェルはホッとした。男同士だからと、着替え中に部屋に居られたらどうしようと思っていたところだった。
 
侍従服は今着ている服とあまり変わらなく、色は深い闇のような青色だ。
 
ロドルフは本をたくさん読んでいるようで、それを手に取ってみたい気持ちに駆られたが、アベルを待たせるわけにはいかず、急いで着ていた服を脱ぎ、侍従服を着替えた。

身なりをきちんと整えるための等身大の鏡も部屋の隅にあり、そこでおかしくないかミシェルは確認する。

やはり侍従服は大きく、ダボついた感は否めない。


「でも、これを着た私はちゃんと男の子に見える」
 

男の子に見えるというのも、女の子としてそれはそれで悲しいが。
 
ミシェルは両頬を軽く叩いて気持ちをシャキッとさせてから、アベルの部屋へ向かった。


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