男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
ミシェルは国王の私室の隣にある侍従部屋へ連れて行かれた。

もうすぐ昼食の時間だが、今日の国王は大臣たちと一階にある大広間で食事をする。普段は私室で食事をする為、侍従はそばで控えている。
 
今日はその必要がなく、アベルはミシェルにざっと侍従の仕事を説明する時間にした。


「まず一日の流れを。朝は六時に陛下を起床していただきます。お目覚めになっていることもあります。次に居間でお茶を用意します。陛下のご衣裳はあらかじめ前日に用意しておりますので、お着替えをお手伝いいたします」
 

ミシェルは表情に出さなかったが、大の大人がひとりで着替えられないのかと心の中で思った。


「お、お着替えはどこまで手伝いを……?」

「ご衣裳を渡していくお手伝いです。それからご朝食を私室の居間でとられます。その時にも控え、なにかご不自由がないか見守ります。その後陛下は四階にある執務室で仕事をされます。その間に、私室の掃除を」
 

ミシェルはアベルの言葉を聞き洩らさないようにして頭に入れていく。


「掃除は侍女ではないのですか?」

「侍女は女ですから。私室に入らせたりでもしたら、なにをするかわかりません」


どうやらアベルは侍女を信用していないようだ。


< 14 / 272 >

この作品をシェア

pagetop