男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
アベルが静かに国王の元へお茶を運ぶのをミシェルはじっと観察していた。

クロードはソファの背もたれにもたれるようにして目を閉じている。
 
疲れているのだろうかと思ったが、そんなことを思うほど知らない。
 
アベルは音をさせないように、見事な大理石のテーブルの上にお茶を置くと戻って来る。
 
それからミシェルは呼吸するのも躊躇われるほどの緊張感でクロードを見ていた。咳でも出たら、休息を妨げてしまうのが怖い。
 
少ししてクロードは上体を起こした。それから優雅な所作でお茶を口に運ぶ。


「ロドルフの怪我は?」
 

突然の国王の問いかけにアベルはささっと数歩前に出る。


「松葉杖をついてなんとか歩けるようでございます」

「そうか……ゆっくり養生するよう手紙を送っておけ」

「ありがたきお言葉。そのように手配いたします」


国王というだけで怖いイメージを持っていたミシェルだが、祖父を気遣うクロードに嬉しくなった。


「そこのお前、額が曲がっている。直せ」


顔を緩ませていたミシェルは突如クロードに声をかけられビクッと肩を跳ねらせた。


「は、はい!」
 

思いがけない指示にミシェルの返事は低い声に出来なかった。視線をアベルへ向けると、早く行けと顔を動かされる。
 


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