男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
ミシェルはソファに座るクロードから、まっすぐの位置の壁に掛けられた額へ急いで向かう。

繊細に描かれた花の額へと、ミシェルは背伸びをして手を伸ばした。そうしなければ届かない場所だった。


(ちょ、ちょっと、とどか……) 


ミシェルは一生懸命額縁の下のほうに触れて、まっすぐに直そうとする。

いや、そもそも額は曲がっていない気もする。曲がっていたとしてもほんの少し。それに背の高いアベルのほうが適任だろう。


「まだ曲がっている」
 

これで大丈夫だろうと思ったミシェルが一歩下がると、追い打ちをかけるクロードの声だ。


「か、かしこまりました」
 

ミシェルは再び背伸びをして額を直す。足を組んでお茶を飲んでいるクロードはミシェルを観察するように見ていた。


(男にしてはずいぶん華奢なやつだ。声変わりもまだの子供のよう)
 

侍従服を着ているが、着られているといったほうがまさに相応しい。


(しかし、久しぶりに見事なシルバーブロンドを見たな)
 

今のロドルフは年を取り白髪だ。クロードが生まれる前から父王の侍従のシルバーブロンドの髪が気に入っていたクロードだ。


< 20 / 272 >

この作品をシェア

pagetop