男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
そしてミシェルが近づくより先にクロードは機敏な動きで距離を縮められた。

ミシェルは逃げたくなる気持ちを堪えながら、ピシッと背筋を伸ばした。


「ロドルフ・ブロンダンの孫のフランツと申します。侍従見習いを本日からさせていただいています」
 

これ以上ないほどの低い声を出して、ミシェルは深く頭を下げる。


「ほう……ロドルフと同じ髪の色だな」
 

クロードは急に興味がなくなったかのように、ミシェルから離れてソファに座る。


「陛下、ただいまお茶をお持ちいたします」
 

アベルは部屋の隅にあるお茶のセットで淹れ始める。

ミシェルもクロードの存在をひしひしと感じながら、アベルの所作を頭に入れる。
 
美しいカップふたつにお茶を淹れ終える。それからアベルはまだ熱いお茶の入ったカップを手にして口にする。 
 
アベルはお茶を淹れる時も、カップを念入りに目視して清潔な布で拭いていた。


「こうして毒味をするんだ」
 

ミシェルに小声でアベルは教える。
 

(陛下は日々、狙われているのかしら……)


そして毒味をする自分にも身の危険がある。

なにかあった場合には首を跳ねられるかもしれない。そんな大変な侍従をいう仕事を祖父がしていたのだと、ミシェルは今気づかされた。


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