男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「イヴォンヌさま、もう大丈夫です。弁償も気になさらないでください。陛下が待っているので失礼いたします」
 

お辞儀をして歩き始めるミシェルにアベルが声をかける。


「ミシェルさま、化粧室へお連れします」

「そ、そうですね」
 

このままでは馬車の座席が汚れてしまいそうだ。
 
ミシェルはアベルに伴われて化粧室へ向かった。


「ここでお待ちしております」
 

化粧室の前の廊下でアベルはミシェルにハンカチを渡した。


「ありがとうございます。すぐに戻ります」
 

ミシェルは弱々しい笑みを浮かべて、化粧室へ足を踏み入れた。静かに扉を閉めた時、奥のほうから女性たちの声が聞こえてきた。


「やっぱりお妃さまになるのはイヴォンヌさましか考えられないわ」

「そうよね。ミシェルさまはただの村娘だから、お妃さまになっても威厳が感じられないわ」
 

化粧室の奥にあるソファで話をしているふたりの声にミシェルは足を止める。


「陛下にお似合いなのはイヴォンヌさまよ。先ほどの叱責も堂にいったものだったわ」

「それにひきかえ、ミシェルさまはおどおど。先が思いやられるわね」
 

ミシェルがいるとも知らずにふたりは話をしている。




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