男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「いいえ。もう戻らなくてはなりません。ではミシェルさま、後日に」

「……はい。ありがとうございました。お気をつけて」
 

ミシェルは複雑な表情で馬車に戻って行くアベルを見送った。


(もう戻れない気がする……)
 

そんなことを思っていると、後ろからロドルフが呼ぶ。


「ミシェル、私の部屋へ来なさい」
 

そう言われて、ミシェルはビクッと肩を跳ねらせてから振り返った。


「はい」

「お父さん、ミシェルは疲れているわ。お茶でも飲んでゆっくりしてから――」

「マリアンヌ、部屋にお茶を持ってきてくれ。フランツ、荷物を運んどいてくれ」
 

ロドルフは地面に置かれたトランク二つをフランツに運ぶように言った。先に家の中へ入るロドルフの後をミシェルは付いて行った。


 
一階の居間の隣にロドルフの部屋がある。

小さな机に備え付けられてある椅子にミシェルは座り、ロドルフはベッドの端に腰を下ろしている。
 
祖父の表情は厳しく、ミシェルは戸惑うばかりだ。


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