男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
その姿にミシェルは胸を高鳴らせた。暴れる鼓動を抑えようとしても出来ない。


(私、重症ね……ここへ来たのはもう会えないって言うためなのに)
 

クロードはミシェルの近くまで黒馬を全速力で走らせ、ひらりと地面に降り立った。


「ミシェル、待たせてすまない」

「いいえ。私も今来たところです。でも来たのはクロードをずっと待たせたくなくてなんです。急用が出来て帰らないとならないんです」


時間が経てば言いづらくなる。ミシェルはすぐに話しをした。


「すぐに帰る? どうしてもダメなのか?」

「はい。申し訳ありません……」
 

クロードの瞳にがっかりした色が見えて、ミシェルは悲しくなったのと同時に罪悪感に襲われる。


(偽ったままでは会ってはいけない。もちろん陛下は手の届かない人だけれど……)
 
ミシェルは頭を下げて去ろうとした。膝より少し長いスカートがひらりと宙を舞う。


「待ってくれないか。ミシェル、渡したいものがある」
 
背後からクロードに声をかけられ、ミシェルは立ち止まり振り返る。
 
クロードはポケットから宝石の付いた髪飾りを出した。そして、キラキラ光る豪華な髪飾りに驚いているミシェルの髪にそれを差し込んだ。


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