男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています

「今日のスープはかぼちゃだよ。上手くこせたから滑らかだよ。焼きたてのパンと一緒にお食べ」


ミシェルの前に湯気の立っているかぼちゃのスープとパンをマーサは置いた。


「うわっ、とても美味しそう！　マーサ、ありがとう！」
　

王城の食事はとても豪華だが、母親が作るようなこういった料理が恋しくなる。


（お母さんとおじいちゃん、どうしているかしら……）
　

きっと王城へ行った私を心配している。
　
ふたりを思い出して、少し胸が切なくなった。その考えを振り払い、ミシェルはかぼちゃのスープを口にした。
　
前回のようにここでクロードと会うかもしれない。ミシェルは急いで食べ終わると、マーサの店を出た。
　
まだクロードとの待ち合わせには一時間ほどある。ミシェルはここからすぐの市場へ行き、新鮮な野菜やお肉、お菓子などを見ていった。
　
ミシェルは少しずつ待ち合わせの場所に近づき、到着した時、正午を知らせる鐘の音が辺りに響いた。
　
そこにクロードはいなかった。


（やっぱりお仕事があるから……）
　

来られないのかもしれないと思った。そこへ馬の蹄の音が聞こえてきた。振り返ると、クロードが黒馬に乗ってこちらへ向かってくるところだった。