男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
だからクロードがなにを叫んでいても耳に入らずに、ミシェルは髪飾りを探した。


(なんで落としちゃったのっ!? ……私ったらバカなんだからっ)
 

しかし、長い時間冷たい川の中に入っていたミシェルの身体は悲鳴を上げていた。

めまいに襲われ、グラッと身体が揺れたその刹那、クロードがミシェルの腕を掴んで引き寄せ、抱き上げられた。
 
びしょ濡れのミシェルから水しぶきが上がる。


「クロードさまっ! お、降ろしてくださいっ!」
 

美麗な顔がすぐ近くにあり、ミシェルは慌てた。公衆の面前で男性に抱き上げられることなど初めてで、羞恥心でいっぱいだ。
 
フランツとしても抱き上げられたことはあるが、あの時は意識を失っていた。


「そんなに必死になってなにを探しているんだ?」
 

そう聞くクロードの視線がミシェルの髪に動く。


「もしかして髪飾りか?」

「は、はいっ! 不覚にも川に落としてしまい――」

「お前はバカかっ!? 髪飾りごときでこんなにびしょ濡れになりおって!」
 

クロードは川に入っていた。膝までの黒いブーツはびしょ濡れ、ミシェルを横抱きにしていることでジュストコールまで染みている。


「降ろしてくださいっ!」

「ダメだ。降ろせば探そうとするだろう」
 

クロードはミシェルを抱いたまま川から出た。歩くたびに嫌な音をたてる。


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