男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
マーサの店に到着し、先に降りたクロードはミシェルに手を差し出した。
 
涙に濡れた顔で一瞬ミシェルは困惑した表情になったものの、両手を出して馬から降ろしてもらう。
 
ミシェルは馬にひとりで乗れない。乗れるのだったら、国王の手を煩わせるわけにはいかないと、さっさと自力で降りていただろう。


「まあ! ミシェル! クロード、どうしてびしょ濡れなの!?」
 

クロードに抱え込まれるようにして店に入ったミシェルに気づいたマーサが小走りで近づく。クロードは腕の中で小刻みに震えるミシェルが心配だった。


「マーサ、すぐに風呂に入れるか?」

「すぐに用意するよ! ミシェルを二階へ」
 

マーサは二階へ上がっていき、クロードはミシェルの肩を抱きかかえ後を追う。
 
ミシェルの物が置いてある一番奥の部屋の扉をマーサは開けると、隣の部屋へ入って行く。ミシェルは両脇に何部屋かある廊下に立ち止まる。


「も、もうしわけ……あ、ありません……」
 

ちゃんと言葉にしたいのに、歯の根が合わなくてどもってしまう。


「話さなくていい。私が行ったら濡れているものを脱いで、湯が入るまでなにか着ているんだ」

「ク、クロードさま……も、身体を、温めて……」

「そうするから、ミシェルは言ったことを早くしなさい」
 

クロードに背を軽く押され部屋の中へ入った。背後で扉が静かに閉まる。
 

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