ダドリー夫妻の朝と夜
「アーサー様」

「なんだ」

「なんでもいいの。なにかお話しになって」

「……おかしな人だ。それなら、君がなにか話してごらん」

「なにかって?」

「なんでもいいと言ったのは君だ」

 いつの間にかアーサーは、エミリアからブランケットを剥いでいた。

「……こんな薄着で」

「だって、すぐに眠るつもりでしたから」

 シュミーズドレスにナイトガウンを羽織っただけの姿だ。侍女にしか見せたことのない格好だから、さすがに恥ずかしい。なんとか隠れようとするエミリアの両腕を、アーサーが掴む。

「腕はこうしなさい」

 自分の首にエミリアの腕を回すと、アーサーは再びエミリアを抱き上げた。

「待って。どこに行かれるの?」

「ベッドへ」

「それなら、わたしくは部屋に戻りますわ」

「なぜ? わたしと夫婦になりたいなら、ここで眠ればいい」


 アーサーは、大きなベッドにそっとエミリアを下ろすと、自らはその傍らに腰を下ろした。

 冷たい美貌に見下され、エミリアは体を捩らせる。

 体を隠そうとすると咎められ、仕方なく両腕を体の脇に投げ出した。

 アーサーがそっと、エミリアのガウンを開く。その下のシュミーズドレスはシルク製で、肌の弱いエミリアのために余計な飾りが最小限に抑えられていた。

 普段は若さに似合わぬ慎ましい装いで隠されているエミリアのたおやかな凹凸は、清らかな絹一枚では隠しきれない。柔らかくふくらむ胸の頂上は、芯が色づく苺のように、白いドレス越しに赤らんでいた。


< 13 / 36 >

この作品をシェア

pagetop