特別な夜
やがて彼女の舌が、口のなかに侵入した。

僕の前歯を柔らかい感触がつつく。

彼女の舌は僕の舌を求めているのだ。

僕もそれを受け入れ、侵入を拒む前歯を開いた。

お互いの舌が絡み合う。

ひとつの意志を持った生き物のように、いやらしく蠢く。

絡ませて、ほどいて、また絡ませる。

唾液も交換し合う。

口のなかは、もはやどちらのものとも判別のつかない唾液でベタベタになっている。

脳はすでに機能停止している状態であり、なにも考えることができない。

己の欲求のままに動いているのだ。
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