シェヘラザード、静かにお休み
一概に否定は出来ないが。
高価になったのを知らないまま生活していたのなら、バニラを口にしてから随分と経っていることになるだろう。
それと何の辻褄が合わないのか、といえば。
「孤児院から一度抜け出して、街のアイスクリームを食べに行ったことがあるのよ」
「そのときにバニラを?」
「ええ、帰ったら折檻されたけれど」
さらりと言われた衝撃的な言葉に、ルイスは言葉を失う。
いつの時代も、孤児院は貧しい。そして人手不足だ。
ルイスの表情の固まり具合を見て、シーラはクスクスと笑った。
「なんてね」
肩を竦めて見せる。普通の女性の顔をした。