ドクター時任は恋愛中毒


電車を乗り継いで到着した彼女の自宅は、綺麗な低層マンションの三階だった。

部屋に着くまでの間に聞いたのだが、実家は千葉にあり今月から一人暮らしを始めたのだという。


「まぁ、今はひとりじゃないんですけど……」

「ひとりじゃない?」


ちょうど部屋の前でそう聞き返した時、水越がドアを開けるより先に内側からガチャっとドアが開き、一人の女性が出てきた。

派手な化粧に露出の多いドレス姿から、夜の仕事でもしていそうな雰囲気である。


「お姉ちゃん、ちょうどよかった!」

「ごめんねちょっと遅くなって」

「じゃあ私行くね?」

「うん、気を付けて」


ぴゅう、と風のように去っていった彼女。その後ろ姿を見送ってから「妹と暮らしてるのか?」と水越に問うと、ふっと笑った口元から予想外の答えが返ってくる。


「あと……姪もです」

「姪?」

「会えばわかりますよ。どうぞ」


そう招かれたものの、少し怖気づく自分がいた。

何を隠そう、俺は子ども――特に感情のままに話したり行動したりする幼児が大の苦手なのだ。

見ている分には可愛いが、接するとなるとどう扱っていいのかわからず、困ってしまう。


< 10 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop