ドクター時任は恋愛中毒
もちろん俺には子育ての経験はないし、一人っ子のため甥や姪もいない。だが、水越の妹の夫の身勝手さくらいはわかる。
「昼間は妹さんが、夜はお前がひとりで面倒を見てるのか」
「そうです。といっても、この生活を始めてまだ一週間経ってないくらいですけど」
「親御さんは頼れなかったのか?」
「父は仕事が忙しいし、母は義両親を介護してるので……」
なるほど。水越の妹は、それで泣く泣く姉を頼ったというわけか。
断ろうにも、目の前にこうしてか弱い存在を目の当たりにしてしまったら、難しいだろうな。特に、水越のような真面目な性格ならなおさらだ。
「三か月ということは、夜間もまだ三時間おきの授乳が必要な時期だろう。……カンファの居眠りは、それでか」
「すみません。言い訳になってしまうけど、体が言うこと聞いてくれなくて……」
疲労の滲んだ顔で、がっくりうなだれる水越。千緒を見つめる眼差しは優しいが、このままの生活を続けていたら、彼女の体が限界を迎えるのは避けられないだろう。
しかしそんなこと、医者である俺が許せるはずがない。
さて、どうしたものか……。しばらく悩んだ末、ごくごくシンプルな思い付きが頭に浮かぶ。
「なら、今夜は俺が千緒の世話をしよう」