漢江のほとりで待ってる
「そうじゃない!あなたのことは、あなたの生い立ちは、お父様から聞いてる。だから、触れられたくないと勝手に思い込んでて何も聞かなかったの!」
「なら同情!?同情でオレとつき合ってくれてたってこと!?親父に言われたから?子供の頃の話だけじゃなく、オレにだってここまで来るのに、色々あったんだ。まだ学生だった時、友人と会社を……」
「同情なんかじゃない!誰に言われたからとかじゃない!私の意思であなたといたいと思った。それに、あなたの友人のことも、今まであなたが生きてきた中で、色んな事があって、好きな人がいても当然だし、聞いたらヤキモチを妬いてしまう、年甲斐もなくって思われるのが嫌だった。だから聞けなかった。普段でもあなたの周りには可愛い女の子が言い寄って来る。そんな状況見てて、私が平然としているとでも思った!?自分に自信がない分、不安でしかない気持ちもあなたは知らないでしょ!」
「……」
あの綺麗で、いつも凛とした彼女から思いもよらない言葉に、何も言えなかった。
けれど、メッセージのことを思い出した。そしたら怒りが込み上げた来た。
「知らない!そんなの知るわけない!!何で!?何で兄貴と実家に帰んの!何で結婚の挨拶が兄貴となの!何で兄貴と墓参りすんの!!ウェディングドレス姿も兄貴は見たんだろ!!あなたと一緒にしたいこと、全部兄貴に取られしまったじゃないか!!オレは?もう何もないじゃん!!もう特別なもの無くなったじゃないか!!」
「由弦!違うから!!落ち着いて!お願いだから!あなただけを思うこの私の特別な感情じゃダメ!?私はずっとあなたしか見てない!私はずっとあなただけのものだから!!」
「……」
沈黙のあと、
「由弦、愛してる」
「……!!」
優しく吐かれた突然の珉珠の告白に、衝撃を受ける由弦。
呆然と立ち尽くす。
辺りは一面わさび畑が広がっていた。
雨音だけが広がり、ひたすら二人を濡らしていく。
珉珠は辺りを見渡した。
すぐ側に小屋があった。
雨を避けるため、珉珠は強引に由弦の腕を掴んで、小屋に連れて入った。