漢江のほとりで待ってる


「疑いもしないのは当然だ。オレだって最近気付いたんだから。それに雅羅夫人達は家族をも欺いたんだ。そして世間をも。お前達兄弟はこれぞ御曹司と思わせる、普段の品格ある振る舞い、二人とも高身長、父親似か?母親似か?似てないのは腹違いだから!これが兄弟だと信用させ、肯定させた、つまり、盲点だったんだ」

「お前らしい分析だな」

「あぁ。オレもまさかと思っていたが、昔お前の所で家政婦を長年していた方を覚えているだろう?今は体を壊されて、ご自宅で養生されている。色々調べて行くうちにその方に辿り着いた。そして話を聞いたら、まさに雅羅夫人と椎名氏は、お前の父、弦一郎氏と出会う前にすでに〝 恋仲 〟だったらしい。結婚の時にはすでに兄上はお腹にいたそうだ。二人は関係をひた隠しにして、愛情を育んでいた。雅羅夫人はこの方だけに相談していたようで、この話はその方以外誰も知らないそうだ。雅羅夫人もこの方の存在には手薄になっていた」

「そうか……親父なら、親父は……このことを知らないのかな?」

「さぁ、どうかな。でも高柳、落ち込んでる暇はないんだ。もしこの事実をオレ達が知ってしまったことを、相手が知ってしまったら~」

「義母達、あるいは兄貴に殺されるってか!?」

「……そうなり兼ねない」

珉珠はひたすら二人の話を黙って聞いていた。

「まさか!そんなに欲しいものなのか?高柳の財産、名誉や地位?権力?それを欲しいと思わないオレはおかしいのか!?」

笑いながら話す由弦が、珉珠にはとても哀し気に映った。

「まさかの結果にならないように、オレ達は彼らの行動より先回りしなきゃいけないんだ。もしかしたら兄上より雅羅夫人達を気にした方がいいかもな」

三人が話している頃、椎名は狂ったように由弦と一条を探し回っていた。

Awaken株式会社社長室、一条の部屋、由弦の部屋を荒らし、USBやパソコンを探し回った。


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